追いかけてくる痩せ細った土色の者達

一時期、ダイエット目的でジョギングしていました。
自分の走っている姿を他人に見られるのが恥ずかしくて走るのは暗くなってから、いつも大体夜22~23時の間でした。
ジョギングコースは大きい公園~神社までの間です。
ちょっと人気が少ないですが街頭があるし、何よりアレを見るまでは幽霊なんてもの全く信じていなかったので怖くも何ともありませんでした。

季節は7月の終わり頃だったでしょうか、いつもの時間にいつものコースを走っていました。
その日は翌日に雨予報が出ていたせいか空もどんよりしていて空気も普段よりジトジト、息をするのも苦しい程湿気ていました。
気持ち悪いなぁと思いましたがそのまま走ってしまって、今思えばこの時家に引き返せば良かったです。

さてどんどん走り公園を通り過ぎて神社の前に到着しました。
後は神社の前から折り返してまた公園の前を通り家へ戻るだけです。
しかしいつもは静かな神社からその時だけはザワザワと数人の話し声が聞こえてきたのです。
不思議に思いましたが夏だし学生達が肝試しでもしているのか神社の関係者でもいるのかと思いましたが、自分には関係ない事だしそのまま走り出そうとしました。
その瞬間、グイッと何かが私の左足を引っ張った感触がありました。
少々足が縺れましたが体制を整え、何だったのかと足元を見ると、ガリガリに痩せ細った土色の手がしっかり私の左足首を掴んでいるのが見えました。
ビックリして思わず「ギャッ!」と叫んだ途端、さっきまで聞こえていた神社の話し声がピタリと止み足を掴んでいた手も消えました。
何だったんだと思いましたが不気味になり急いで家まで走り出しました。
しかし私が走る後ろから数人の足音が聞こえてきたのです。
あれは神社にいた奴らか、もしかしてあの手に関係あるのか、怖くて泣きそうでしたが後ろを振り返る余裕もありません。
神社から離れ公園を通り過ぎ、家が見えてきました。
後は階段を上がり家に入ればきっと大丈夫、そこで少し余裕が出てしまったからかチラッと後ろを振り向いてしまったんです。
そこには、目は落ち窪み口からは長い舌が足れガリガリに痩せた体には何も服を着ていない、さっき見た土色の手のような肌色をした者達が居たのです、あいつらは生きている者じゃない、何故だかそう確信できました。
口が微かに動いているようですが何を言っているのかあまり聞こえません。
「…ダ」「エ…」「サダ…」あいつらは何て言っているんでしょう、「エ…サ…ダ…」餌だ!
捕まったら殺される!そう思った瞬間、目が醒めました。
気付けば辺りは少し明るくなっていて、腕時計を見れば午前4時を過ぎた所のようです。
体が痛いと思ったら、あの神社の前で倒れていたようでした。
慌てて家に帰りあれは果たして夢だったのか、何らかの拍子にあそこで気絶してしまったのかと思いつつシャワーを浴びていると、左足に痛みを感じました。
そこを見ると、誰かに強く足首を掴まれたような、黒い痣が残っていたんです。

あれ以来あのジョギングコースは走らなくなりましたし、あの神社にも全く寄り付かなくなりました。
今でもあいつらは、真夜中に通りかかる者を待ち構えているのでしょうか。